401 |
1 |
今から友達に手紙を書く。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ナマカラ ドゥスンケー ティガミウ カ]カズー |
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述語は意思形。一回かぎりのこれからの動作については必ず意思形〈~ずー〉か未来形〈~ぐまた〉を使用する。 |
単文《平叙文》 |
動詞:断定非過去 |
①起点(カラ)、①相手(ニ)、①対象(ヲ) |
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402 |
2 |
筆で手紙を書く人もいる。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
フディシー ティガミウ カ]キ ピトゥマイ ブイドゥスー |
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累加の助詞は〈~まい〉で、宮古語特有の形式。語源について定説はないが、日本語の「~も」と同源で、宮古語において化石的な形で残っている〈~ム〉「~も」を含んでいると考えられる。 |
複文(名詞修飾子)《平叙文》 |
動詞:運体非過去
動詞:断定非過去 |
①手段(デ)、①対象(ヲ)、②累加(モ) |
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403 |
3 |
家に帰って、すぐに手紙を書いた。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ヤーンケ]ー イキッティー フタキナ ティガミウ カキタイ |
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〈~ってぃー〉は継起専用の形式である。前後の動作が重なることを含意する接続形とは区別される。 |
複文(副詞節)《平叙文》 |
動詞:中止【継起】動詞:断定過去 |
①着点(ニ)、①対象(ヲ)、⑥中止節(テ) |
すぐに |
404 |
4 |
書いた手紙を何度も読み返す。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
カキタ]イ ティガミウ イフケーリマイ ユンノース |
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〈いふ〉「幾」、〈~けーり〉「~回」。 |
複文(名詞修飾節)《平叙文》 |
動詞:連体過去
動詞:断定非過去 |
対象(ヲ) |
何度も |
405 |
5 |
夜は10時になったら、さっさと寝ろ |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ユイ]ン ナリー [ジュージ]ン ナイタ[カラー フタキナ ニン]ル |
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条件形は〈~たかー〉・〈~たからー〉によって表される。古い世代は〈~てぃかー〉〈~てぃからー〉とも発音し、「~てからは」に由来する。 |
複文(副詞節)《平叙文》 |
名詞:なる
動詞:仮定【予測的条件】
動詞:命令 |
②主題(ハ)、①着点(ニ)、⑥条件節(タラ) |
夜、さっさと |
406 |
6 |
危ないから、車道を歩くな |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ウカーッ]サ アイバ [クルマミツウ アイキ]ナ |
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形容的表現は分析的で、形容的語幹の名詞・副詞形(〈~さ〉派生)と補助動詞の〈あい〉「ある」の2文節から構成される。アクセント単位も2単位で、文節の境界がはっきりと意識されている。原因は接辞〈~ば〉によって表される。 |
複文(副詞節)《命令文(禁止)》 |
形容詞:断定非過去+原因・理由形式
動詞:禁止 |
①経過域(ヲ)、⑥原因・理由節(カラ) |
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407 |
7 |
この本は太郎にやろう |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
クヌ シュムツ]ウバー タローン[ケー ッフィズー |
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述語は例文1と同じ形。主題化された目的語は対格標識〈~う〉が省略されず、対格特有の主題形〈~ばー〉が付く。 |
単文《平叙文(意志)》 |
動詞:意志 |
②主題(ハ), ①相手(ニ) |
この、やる |
408 |
8 |
昼から雨が降るだろう |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ピーマカラー アミヌ]ドゥ ッフィ [パ]ズ |
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推量は形式名詞の〈ぱず〉によって表される。韻律的特徴を調べて確認しておく必要があるが、ここでは暫定的に多良間方言と同じく、連体節を受ける形式名詞として分析しておく。推量の確実性が高くなると、〈~ぐまた〉が使われる。 |
単文《平叙文(推量)》 |
動詞:推量非過去 |
①起点(カラ)、①主体(ガ) |
昼 |
409 |
9 |
春になれば、花が咲く。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ウリズ]ン ナイタ[カー パナヌ]ドゥ サキ゜ |
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〈ん〉終わりの名詞に〈~に〉「~に」が付くと、鼻音の縮小が起き、〈ん-〉とはならない。 |
複文(副詞節)《平叙文》 |
名詞:なる
動詞:仮定【総称的条件(一般条件)】
動詞:断定非過去 |
①着点(ニ)、①主体(ガ)、⑥条件節(バ) |
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410 |
10 |
花子が窓を開けたら、虫が入ってきた |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ハナコ]ガ マドゥー [アキーバドゥ ムスヌ クマリ]ー キタイ |
ハナコ]ガ マドゥー [アキタカラー ムスヌドゥ クマリ]ー キタイ |
事実的条件は接辞〈~ば〉によって表されるが、条件形によっても表されうる。なお、この〈~ば〉は原因・理由の〈~ば〉、疑問形の〈~ば〉と同源である。 |
複文(副詞節)《平叙文》 |
動詞:仮定【事実的条件】
動詞:断定過去 |
①他動詞主体(ガ)、①対象(ヲ)、①主体(ガ)、⑥条件節(タラ) |
てくる |
411 |
11 |
朝はあまりテレビを見ない。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ストゥムテ]ー アンダキ テレビウ[バー ミー]ン |
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否定形は〈~ん〉。「朝」は〈すとぅむてぃ〉、古典日本語の「つとめて」と同源。 |
単文《平叙文》 |
動詞:否定(断定非過去) |
①対象(ヲ)、②主題(ハ) |
朝、あまり |
412 |
12 |
花子はそんな番組なんか見はしない。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ハナコ]ー アン[シーヌ バングミウバー ミーマ]イ シューン |
ハナコ]ー アン[シーヌ バングミ]ヌ ンメウバー ミーマイ [シュー]ン |
否定の取り立ては動詞の名詞形を〈~まい しゅーん〉「~もしない」のフレームに入れて表す。bc型動詞の場合はこの名詞形がb型である。「~なんか」は複数の分析的な形式の〈~ぬ んめ〉で表せる。この用法では、複数の意味がないことに注意されたい。〈あ]んしー〉「そんな」は(あん)(しー)のように2つの韻律語から成る。 |
単文(名詞修飾句)《平叙文》 |
動詞:否定(断定非過去・とりたて) |
②主題(ハ)、②評価(ナンカ) |
そんな |
413 |
13 |
花子は昨日テレビを見なかった。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ハナコ]ー キヌーヤ [テレビ]ウバ ミーダ[タン |
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否定過去は〈~だたん〉。〈~だ〉は否定、〈~たん〉は過去。 |
単文《平叙文》 |
動詞:否定(断定過去) |
②主題(ハ)、②対比(ハ)、①対象(ヲ) |
昨日 |
414 |
14 |
花子はテレビを見ないで、本ばかり読んでいる。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ハナコ]ー テレビウ[バー ミー]ングマタドゥ シュムツウ[テーン ユミ]ー ブイ |
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否定中止形は否定形〈~ん〉に未来の接辞〈~ぐまた〉を付けて形成される。 |
複文(副詞節)《平叙文》 |
動詞:否定(中止【付帯状況】)
動詞:継続【習慣】(断定非過去) |
①対象(ヲ)、②主題(ハ)、②限定(バカリ)、⑥中止節(テ) |
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415 |
15 |
テレビを見なければ、この仕事は今日中に終わっただろう。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
テレビ]ウ ミー [ウカダカー クヌ スグトー キュージュー]ン オヴァリー [ウキ パ]ズ |
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否定条件は〈~だかー〉または〈~だからー〉。反事実的条件は本動詞の接続形に続く補助動詞の〈うき〉によって表される。 |
複文(副詞節)《平叙文(推量)》 |
動詞:否定(仮定【反事実的条件】)
動詞:推量過去 |
①対象(ヲ)、①時点(ニ)、②主題(ハ) |
今日 |
416 |
16 |
熱を出した子どもに薬を飲ませた。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ニツウ ンダシ]ー ブイ ッファンケードゥ フスゥイユ [ヌマスタ]イ |
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熱を出した状態で薬を飲ませるため、本例文は継続相で翻訳される。継続相は動詞の接続形と補助動詞の〈ぶい〉「居る」によって表される。使役は〈~あす〉。 |
複文(名詞修飾節)《平叙文》 |
動詞:連体過去
動詞:使役(断定過去) |
①対象(ヲ)、①相手(被使役者:ニ) |
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417 |
17 |
お母さんが妹{を/に}お使いに行かせた。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
アンナガ]ドゥ ミドゥンウットゥン[ケー ムヌコー]ガ イカスタイ |
アンナガドゥ ミドゥンウットゥー ムヌコーガ イカスタイ |
被使役者は一般的に〈~んけー〉でマークされるが、対格〈~う〉でマークすることも可能である。使い分けは未詳。 |
単文《平叙文》 |
動詞:使役(断定過去) |
①主体(使役者:ガ)、①対象/相手(被使役者:ヲ/ニ)、①目的(ニ) |
お母さん、妹 |
418 |
18 |
弟とけんかして、私だけお父さんにおこられた。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ウットゥ]トゥ オーヤーウ [シーッティドゥ アガ]テーン オトーン [イザリタ]イ |
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受身は〈~あり〉によって形成され、受身の動作主は〈~ん〉「に」でマークされる。〈おとー〉「お父さん」は近代の表現で、本来は〈うや〉と言う。〈うっとぅ〉は性の意味を含まず、「年下のきょうだい」を指す。一人称の形式には〈あ〉と〈ば〉の両形があり、前者は後者より丁寧で、話し相手が目上の人に使いやすい。それぞれの形式は日本語の「吾(あ)」と「我(わ)」と同源である。 |
複文(副詞節)《平叙文》 |
動詞:中止【原因・理由】
動詞:受身【直接】(断定過去) |
①相手(ト)、①相手(受身の動作主:ニ)、②限定(ダケ) |
弟、一人称代名詞、お父さん |
419 |
19 |
留守中に泥棒に入られた。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ヤー]ン ブラーン バーンドゥ [ヌスドゥ]ン クマラリタイ |
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「留守」の訳は「家にいない時」。多良間方言と同じく、「入る」という意味に対して「籠(こも)る」と関係する〈くまい〉という動詞を使う。「入る」と同源の動詞を使う宮古語の他の方言とは対照的である。 |
単文《平叙文》 |
動詞:受身【間接】(断定過去) |
①時点(ニ)、①相手(受身の動作主:ニ) |
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420 |
20 |
この子はまだ小さいけれども、難しい漢字が書ける。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ウヌ ッファー ミダ イミシャ アイシュガドゥ ムツカシー カンジウ カキドー |
ウヌ ヤラベ]ー カンジェー カカリドゥ[ス]ード[ー |
逆接は〈~しゅが〉。この例文に対して可能形〈かかり〉をすぐに導き出すことができなかった。動詞の基本形〈かき〉自体は能力も表せ、本例文において日本語の「書ける」の的確な訳となる。確認調査では、可能形も使用できることを確認した(方言訳2)。 |
複文(副詞節)《平叙文》 |
形容詞:断定非過去+逆接形式
形容詞:連体非過去
動詞:可能【能力】(断定非過去) |
①対象(ガ)、②主題(ハ)、⑥逆接(ケレドモ) |
この、まだ |
421 |
21 |
今日は時間があるので、ゆっくり手紙が書ける。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
キュー]ヤ マドゥヌ [アリ]ー ブイバ ヨーンナー [ティガミウ カ]カズー |
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述語は意思形。この例文に対して可能形は導き出せなかった。〈まどぅ〉は「暇(な時間)」。 |
複文(副詞節)《平叙文》 |
動詞:連体(ノ)非過去+原因・理由形式
動詞:可能【状況】(断定非過去) |
①主体(ガ)、①対象(ガ)、②主題(ハ)、⑥原因・理由節(ノデ) |
今日 |
422 |
22 |
この子はまだ小さいので、平仮名しか書けない。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
クヌ ッファー ミダ イミ]シャ アイバ [ヒラガナテーンドゥ カカリ]ー |
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〈~しか...ない〉の表現はなく、限定の意味を〈~てーん〉「~だけ」と動詞の肯定形で表す。 |
複文(副詞節)《平叙文》 |
形容詞:連体(ノ)非過去+原因・理由形式
形容詞:連体非過去
動詞:可能・否定【能力】(断定非過去) |
②主題(ハ)、②限定(シカ)、⑥原因・理由節(ノデ) |
この、まだ |
423 |
23 |
机がないので、字がちゃんと書けない。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
ツクエ]ヌ ネーンニバドゥ [ズー]ヌ ジョートーン カカリン |
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可能形【状況】は〈~あり〉で、受身と同形。 |
複文(副詞節)《平叙文》 |
動詞:連体(ノ)非過去+原因・理由形式
動詞:可能・否定【状況】(断定非過去) |
①主体(ガ)、①対象(ガ)、②主題(ハ)、⑥原因・理由節(ノデ) |
ちゃんと |
424 |
24 |
太郎は今、隣の部屋で本を読んでいる。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
タロー]ヤ ナマ トゥナイヌ ヘヤンドゥ シュムツウ [ユミ]ー ブイ |
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継続相は例文16を参照。 |
単文《平叙文》 |
動詞:継続【進行】(断定非過去) |
①場所(デ)、①対象(ヲ)、②主題(ハ)、③連体(ノ) |
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425 |
25 |
太郎は花子{に/から}借りた本をもう最後まで読んでいる。 |
沖縄県宮古郡多良間村水納島 |
男 |
1939 |
タローヤ ハナコカラ カイタイ ホンヌドゥ トゥズミガミ ユミー ブイ |
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継続相【結果】は動詞の接続形と補助動詞の〈ぶい〉「居る」で表される。 |
複文(名詞修飾節)《平叙文》 |
動詞:連体過去
動詞:継続【結果】(断定非過去) |
①相手(ニ/カラ)、①対象(ヲ)、①終点(マデ)、②主題(ハ) |
もう |