id 例文id 例文 対象方言 話者性別 話者生年 方言訳 1 方言訳 2 備考・コメント 単複(節タイプ) 述語タイプ 文法形式 語彙・構文
251 1 今から友達に手紙を書く。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 ンナマカラ アグンカイ テガミユ カキヅ ガマタ。 ・「手紙」は方言で「ティガミ」というが,ここでは,共通語形の「テガミ」になっている。 ・形態音韻規則により,「手紙を」は「テガミュー」のように,対格助詞「ユ」は前の名詞の影響で,原則的に音の交替が起こるが,ここでは「テガミユ」という音交替がない形になっている。借用語の場合は,音交替が適用されないことが多い。 ・宮古語諸方言では,自分の意志や予定を表すとき,断定非過去(現在非過去)の「カキヅ」があまり使用されず,意志を表す接辞「-ディ」や,形式名詞「ガマタ」を使って,「カカディ」や「カキヅ ガマタ」などの形で使われることが多い。 ・起点(カラ):カラ ・相手(ニ):ンカイ ・対象(ヲ):ユ 単文《平叙文》 動詞:断定非過去 ①起点(カラ)、①相手(ニ)、①対象(ヲ)
252 2 筆で手紙を書く人もいる。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 フデシ テガミユ カキヅ ピヅトゥマイドゥ ウー。 ・1と同様に,「手紙を」は「テガミユ」という音交替のない形になっている。 ・連体非過去は断定非過去と同様に「カキヅ」になる。 ・手段(デ):シ ・累加(モ):マイ 複文(名詞修飾子)《平叙文》 動詞:運体非過去
動詞:断定非過去
①手段(デ)、①対象(ヲ)、②累加(モ)
253 3 家に帰って、すぐに手紙を書いた。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 ヤーンカイ イキッティカラドゥ,テガミユ カキヅター。 ・1と同様に,「手紙を」は「テガミユ」という音交替のない形になっている。 ・中止【継起】:-ッティ(カラ(ドゥ)) ・「家に帰る」は「ヤーンカイ カイヅ(直訳:家に帰る)」より,「ヤーンカイ イキヅ(直訳:家に行く)」のほうがよく使われる。 ・着点:ンカイ ・「すぐに」は久松方言では「フタキナ」であるが,ここでは訳されていない。 複文(副詞節)《平叙文》 動詞:中止【継起】動詞:断定過去 ①着点(ニ)、①対象(ヲ)、⑥中止節(テ) すぐに
254 4 書いた手紙を何度も読み返す。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 カキヅター テガミユドゥ ナンカイマイ ユミノース。 ・1と同様に,「手紙を」は「テガミユ」という音交替しない形になっている。 ・連体過去は断定過去と同様に「カキヅター」になる。 ・何度も:ナンカイマイ ・読み返す:ユミノース(直訳:読み直す) 複文(名詞修飾節)《平叙文》 動詞:連体過去
動詞:断定非過去
対象(ヲ) 何度も
255 5 夜は10時になったら、さっさと寝ろ 沖縄県宮古島市久松松原 1949 ユニャーンナ ジュージンカイ ナヅチカー,ペーペーチ ニヴヴィ。 ・「夜は」は「ユニャー(夜)ン(に)ナ(は)」になっている。なお,主題(ハ)は「ヤ」であるが,対格助詞と同じように,前の名詞の影響で,音交替するすることが一般的である。この場合,「ヤ」は前の助詞「ン」の影響で,「ナ」になっている。 ・着点(ニ):ンカイ ・条件節(タラ):-チカー ・寝ろ:二ヴヴィ(「ニヴ」の命令形) ・さっさと:ペーペーチ(直訳:早々と)。 複文(副詞節)《平叙文》 名詞:なる
動詞:仮定【予測的条件】
動詞:命令
②主題(ハ)、①着点(ニ)、⑥条件節(タラ) 夜、さっさと
256 6 危ないから、車道を歩くな 沖縄県宮古島市久松松原 1949 アヤスカーバ,クルマム゜ツーバ アスキヅナ。 ・経過域(ヲ):ユ(「バ」は対格助詞の主題標識)。「車道」は「クルマム゚ツ(直訳:くるまみち)」というが,ここでは,形態音韻規則により,「車道を」は「クルマム゚ツー」のようになっている。また,「クルマム゚ツツゥ」といういい方もある。 ・原因・理由節(カラ):-バ(ドゥ) (ドゥは焦点助詞) ・禁止:-ナ 複文(副詞節)《命令文(禁止)》 形容詞:断定非過去+原因・理由形式
動詞:禁止
①経過域(ヲ)、⑥原因・理由節(カラ)
257 7 この本は太郎にやろう 沖縄県宮古島市久松松原 1949 クヌ ホンヌバ タローンカイ フィーッドー。 ・相手(ニ):「ンカイ」 ・この:クヌ(「ウヌ」とも) ・やる:フィーヅ(=あげる,くれる),意志形は「フィーディ」,終助詞「ドー」が意志形に後続すると,「フィーッドー」になる。 単文《平叙文(意志)》 動詞:意志 ②主題(ハ), ①相手(ニ) この、やる
258 8 昼から雨が降るだろう 沖縄県宮古島市久松松原 1949 ピヅーマカラ アミヌドゥ ッフパズ。 ・「昼」:ピヅーマ ・起点(カラ):カラ ・主体(ガ):ガ(代名詞,年上の親族など),ヌ(年下の親族,無生物など) ・ッフパズ:「ッフ(降る)」+「パズ(終助詞,だろう)」 単文《平叙文(推量)》 動詞:推量非過去 ①起点(カラ)、①主体(ガ)
259 9 春になれば、花が咲く。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 ハルンカイ ナヅチカー,パナマイドゥ サキヅ。 ・なる:ナヅ ・仮定:-チカ(ラ)ー(「タラ」に相当) ・「パナマイドゥ サキヅ」を直訳すると,「花もぞ咲く」になる。 複文(副詞節)《平叙文》 名詞:なる
動詞:仮定【総称的条件(一般条件)】
動詞:断定非過去
①着点(ニ)、①主体(ガ)、⑥条件節(バ)
260 10 花子が窓を開けたら、虫が入ってきた 沖縄県宮古島市久松松原 1949 ハナコガ マドー アキチカラー,ムスヌドゥ ヅヅィ キヅター。 ・9と同様に,「-チカ(ラ)ー」が使われる。 ・マドー:「マド(共通語,窓)」+「ユ(を)」 ・ヅヅィ キヅター:入ってきた。「ヅー(入る)」の中止形「ヅヅィ」+「キヅー(来る)」の過去形「キヅター」 複文(副詞節)《平叙文》 動詞:仮定【事実的条件】
動詞:断定過去
①他動詞主体(ガ)、①対象(ヲ)、①主体(ガ)、⑥条件節(タラ) てくる
261 11 朝はあまりテレビを見ない。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 ストゥムテー アンチーナー テレビユバ ミーン。 ・形態音韻規則により,「ストゥムティ(朝)+ヤ(は)」は「ストゥムテー」になる。 ・形態音韻規則より,「テレビユ」を「テレビュー」になるべきであるが,前の語が外来語の場合は,対格助詞「ユ」は音交替しないことが多い。 ・否定(断定非過去):-ン ・朝:ストゥムティ(<つとめて) ・あまり:アンチーナー 単文《平叙文》 動詞:否定(断定非過去) ①対象(ヲ)、②主題(ハ) 朝、あまり
262 12 花子はそんな番組なんか見はしない。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 ハナコヤ アンチーヌ バングミユバ ミーン。 ・ユバ:「ユ(を)」+「バ(対格専用主題)」 ・「見はしない」は「ミーン(見ない)」と訳されている。 ・そんな:アンチーヌ 単文(名詞修飾句)《平叙文》 動詞:否定(断定非過去・とりたて) ②主題(ハ)、②評価(ナンカ) そんな
263 13 花子は昨日テレビを見なかった。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 ハナコヤ キヅノー テレビユバ ミーダム゜。 ・否定(断定過去):-ダム゚ ・昨日:キヅヌ ・昨日は:キヅノー 単文《平叙文》 動詞:否定(断定過去) ②主題(ハ)、②対比(ハ)、①対象(ヲ) 昨日
264 14 花子はテレビを見ないで、本ばかり読んでいる。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 ハナコヤ テレビユバ ミーダナドゥ,ホンヌバーキ ユミュー。 ・否定(中止【付帯状況】):-ダナ(ドゥ),-ダナシ(ドゥ) ・ホンヌ:「ホン(本)」+「ユ(を)」 ・継続:ウー(読んでいる:ユミュー < ユミ「読んで」+ウー「いる」) ・限定(バカリ):バーキ 複文(副詞節)《平叙文》 動詞:否定(中止【付帯状況】)
動詞:継続【習慣】(断定非過去)
①対象(ヲ)、②主題(ハ)、②限定(バカリ)、⑥中止節(テ)
265 15 テレビを見なければ、この仕事は今日中に終わっただろう。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 テレビユ ミーダカー,クヌ スグトゥヤ キューンナ オワリドゥ ウキヅヤー ・否定(仮定【反事実的条件】):-ダカー ・「今日中に」は「キューンナー(直訳:今日には)」と訳されている。(「キュー(今日)」+「ン(に)+「ナ(は)」) ・オワリドゥ ウキヅヤー:終わっているだろう。(直訳:終わりぞおくね) ・「中止形+ウキヅ」は直訳すると「~ておく」になるが,ここでは未来の残存結果の意味である。 複文(副詞節)《平叙文(推量)》 動詞:否定(仮定【反事実的条件】)
動詞:推量過去
①対象(ヲ)、①時点(ニ)、②主題(ハ) 今日
266 16 熱を出した子どもに薬を飲ませた。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 ネツヌ イデュー ッファンカイドゥ フスゥヅヅゥ ヌマスター。 ・方言訳の直訳:熱が出ている子供に薬を飲ませた。 ・「熱」は方言で「二ツ」というが,ここでは,共通語形の「ネツ」になっている。 ・相手(被使役者:ニ):ン/ンカイ(ただし,「ンカイ」は話者によって許容度が異なる。) ・フスゥヅヅゥ:フスゥヅ「薬」+ユ「を」 ・ヌマスター:飲ませた 複文(名詞修飾節)《平叙文》 動詞:連体過去
動詞:使役(断定過去)
①対象(ヲ)、①相手(被使役者:ニ)
267 17 お母さんが妹{を/に}お使いに行かせた。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 カーチャンガドゥ ウトゥトゥンカイ マッチャンカイ イカスター。 ・方言訳の直訳:母ちゃんが妹に店に行かせた。 ・「お母さん」は「アニ」という言い方もあるが,ここでは「カーチャン」と訳されている。 ・妹:ウトゥトゥ ・店:マッチャ 単文《平叙文》 動詞:使役(断定過去) ①主体(使役者:ガ)、①対象/相手(被使役者:ヲ/ニ)、①目的(ニ) お母さん、妹
268 18 弟とけんかして、私だけお父さんにおこられた。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 ウトゥトゥトゥ アイッティドゥ,ドゥーガバーキドゥ オトーン ンダーレーター。 ・原因は「-バ(ドゥ)」で表されることが多いが,ここでは継起を表す「~ッティ(ドゥ)」が使われている。 ・ンダレーター:叱られる ・相手(ト):トゥ ・相手(受身の動作主:ニ):ン/ンカイ(ただし,「ンカイ」は話者によって許容度が異なる。) ・限定(ダケ):バーキ(「ドゥーガバーキ」は直訳すると「自分がだけ」になる。この場合,「ドゥーガ(属格)」のように主格の「ガ」がついているが,格がついていない「ドゥー」も可能である) ・弟:妹と同じように「ウトゥトゥ」である。 ・「お父さん」は「アーザ」という言い方もあるが,ここでは「オトー」と訳されている。 複文(副詞節)《平叙文》 動詞:中止【原因・理由】
動詞:受身【直接】(断定過去)
①相手(ト)、①相手(受身の動作主:ニ)、②限定(ダケ) 弟、一人称代名詞、お父さん
269 19 留守中に泥棒に入られた。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 ヤーン ミーン バースンドゥ ヤマグン ヅヅァレーター。 ・方言訳の直訳:家にいないときに泥棒に入られた。 ・泥棒:ヤマグ ・時点(ニ):ン ・相手(受身の動作主:ニ):ン/ンカイ(ただし,「ンカイ」が不可という話者もいる。) 単文《平叙文》 動詞:受身【間接】(断定過去) ①時点(ニ)、①相手(受身の動作主:ニ)
270 20 この子はまだ小さいけれども、難しい漢字が書ける。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 クヌ ッファー ンナダ イミッチャガマスゥガドゥ,アンチーヌ ムズカス カンジマイ カカレールバー。 ・方言訳の直訳:この子はまだ小さいけれども,こんな難しい漢字も書かれるよ。 ・小さい:イミッチャガマ(イミ「小さい」+ッチャ/ッツァ「形容詞指小辞」+ガマ「名詞指小辞」) ・アンチーヌ:このような/そのような/あのような(「アンシヌ」とも) ・カカレーヅ:書ける(能力可能と状況可能の違いはない) ・-ルバー:第1類動詞(母音語幹動詞)は「-(ル)バ」が後続し,第2類動詞(子音語幹動詞,一部母音語幹動詞)は「-バー」が後続し,相手に何か新しい情報を提供するときに使われ,「~よ」と訳されることが多い。 ・能力の対象を表すには「ヌ」(が)も「ユ」(を)も使えるが,「ユ」を許容しない話者もいる。(ただし,ここでは,話者は「マイ」(も)で代用されている。) 複文(副詞節)《平叙文》 形容詞:断定非過去+逆接形式
形容詞:連体非過去
動詞:可能【能力】(断定非過去)
①対象(ガ)、②主題(ハ)、⑥逆接(ケレドモ) この、まだ
271 21 今日は時間があるので、ゆっくり手紙が書ける。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 キューヤ ジカンヌ ム゜チューバ,ヌカーヌカシ テガミマイ カカレーヅ。 ・方言訳の直訳:今日は時間が満ちているので,ゆっくり手紙も書かれる。 ・状態可能の場合でも20と同じように,「カカレーヅ」が使われる。 ・ム゚チューバ:満ちている,いっぱいある。(「ム゚ツ」(満ちる)の中止形「ム゚チ」+「ウー」(いる)+「バ」(原因,理由)) ・20と同じように,能力の対象を表すには「ヌ」(が)も「ユ」(を)も使えるが,「ユ」を許容しない話者もいる。(ただし,ここでは,話者は「マイ」(も)で代用されている。) ・理由節(ノデ):-バ ・ヌカーヌカ(シ):ゆっくり 複文(副詞節)《平叙文》 動詞:連体(ノ)非過去+原因・理由形式
動詞:可能【状況】(断定非過去)
①主体(ガ)、①対象(ガ)、②主題(ハ)、⑥原因・理由節(ノデ) 今日
272 22 この子はまだ小さいので、平仮名しか書けない。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 クヌ ッファー イミカーバ,ヒラガナシカ カカレーン。 ・小さいので:イミカーバ(「イミ」(小さい)+「カー」(動詞化接辞)+「バ」(原因,理由)) ・「シカ」はおそらく共通語からの借用だと思われる。 ・「まだ」は久松方言では「ンナダ」であるが,ここでは訳されていない。 複文(副詞節)《平叙文》 形容詞:連体(ノ)非過去+原因・理由形式
形容詞:連体非過去
動詞:可能・否定【能力】(断定非過去)
②主題(ハ)、②限定(シカ)、⑥原因・理由節(ノデ) この、まだ
273 23 机がないので、字がちゃんと書けない。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 ツクエヌ ニャーンニャバドゥ,ズーマイ カギッチャ カカレーン。 ・方言訳の直訳:机がないので,字もちゃんと書けない。 ・コピュラ「ヤ-」は「ン」で終わる語(ここでは,否定動詞「ニャーン(ない)」)のあとに現れるときに,「ニャ-」になる。 ・カギッチャ/カギッツァ:きれいに 複文(副詞節)《平叙文》 動詞:連体(ノ)非過去+原因・理由形式
動詞:可能・否定【状況】(断定非過去)
①主体(ガ)、①対象(ガ)、②主題(ハ)、⑥原因・理由節(ノデ) ちゃんと
274 24 太郎は今、隣の部屋で本を読んでいる。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 タローヤ ンナマ トゥナヅヌ ヘヤンドゥ ホンヌ ユミュードー。 ・継続【進行】:ウー(読んでいる:「ユミ(読んで)」+「ウー(進行)」→ユミュー) ・場所(デ):ン(ドゥ) ・本を:ホン「本」+ユ「対格」→ホンヌ ・連体(の):ヌ ・ドー:終助詞「~よ」 単文《平叙文》 動詞:継続【進行】(断定非過去) ①場所(デ)、①対象(ヲ)、②主題(ハ)、③連体(ノ)
275 25 太郎は花子{に/から}借りた本をもう最後まで読んでいる。 沖縄県宮古島市久松松原 1949 タローヤ ハナコカラ カヅター ホンヌバ モー サイゴガミ ユミドゥーキヅ。 ・「もう」は久松方言では「ンニャ」であるが,ここでは共通語の「モー」になっている。 ・「カヅター」の「ヅ」は無声音の「ター」の前に現れる場合,無声化するため,実際の発音は「カスター」になる。 ・継続【結果】:ウキヅ(本動詞は「置く」という意味である) ・ユミドゥーキヅ:読んである。(「ユム」(読む)の中止形「ユミ」+「ドゥ」(焦点助詞)+ウキヅ(~ておく)) ・相手(ニ/カラ):カラ ・終点(マデ):ガミ 複文(名詞修飾節)《平叙文》 動詞:連体過去
動詞:継続【結果】(断定非過去)
①相手(ニ/カラ)、①対象(ヲ)、①終点(マデ)、②主題(ハ) もう
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